« 長らくごぶさたいたしました | メイン | 書いてみましょうか »

ちらしずしの夜 

ミラノへ行ってひといきついてから早2週間。
ミラノではいつもの宿で知り合った「あつこちゃん」とジャズを聞きにいって、日本だったら
8000円はするライブを3000円強で聞けることに感動しました。

みなさん、日本はまた寒くなったそうですがお元気ですか。
ブラもあれから大雪が降って「冬だ冬だ」とおお騒ぎした後に
3月4日の今日真っ青な空で一転「春」です。

秋にブラに来ていたアメリカ人のジェシカがうちに泊まりに来ていて
暮らしは少し変わりました。パオラと私の2人だったのが「3」になり、
少しの混乱と中くらいのはんざつと多くのヨロコビと。。

というわけでずっと書けずにいたというわけです。。

先週金曜日は、ついに映画祭実行委員長のルカ・ブッソを招いて
ちらしずしの「ますさんのかぼちゃ」上映会をしました。
(「かぼちゃ」は12月から作っていたチネマ・コルト・インブラ映画祭用の
短編ドキュメンタリー作品です。今までの日記を読んでいない人のために)
ルカ・ブッソは2年前に私が書いたブラの記事に「ぎょろりとした目の」
で登場する、気さくなお兄ちゃんです。彼自身も映画を作っている人なので
ルカに見せるのはなかなか緊張します。

「ちらしずし」はイタリアで作り慣れた一品となりましたが、
いったい何を魚でのせるのか、いつも迷います。
私としては「まぐろ」じゃないほうがおいしそうな気がするのですが
ーー鮮度の悪いまぐろよりもパックのスモークサーモンの方がおいしいそうに見えたりもするのでーー
「SUSHI」となると「トンノ」(イタリア語でまぐろ)を期待されることが多い国外、
いつも、やっぱりまぐろか、とあきらめ半分で赤黒トンノを買い求めます。

その赤黒いトンノもしょうがじょうゆにつけこんで、『ヅケ』にすると
身がしまってなかなかおいしいものです。午後から薄焼き卵を作って細く細く切って、
それからいんげんをゆでてななめに切って、すし飯を作って(米酢はないのでリンゴ酢で)、
準備ばんたん、後は実行委員たちを待つばかり。ルカだけでなく、子持ち主婦のルイーザも
やってくる予定です。

ルカが来るならワインを買っておかなければダメよ、とパオラが数日前に言っていたように
誰かを招待するなら「ワインなし」というわけにはいきません。
夏にぶどうの収穫を撮影したワイナリーのワインを1本用意しておきました。
これだから誰かをよんで晩ご飯をするのはイヤなのよね、とはパオラの言葉。お金はかかる、
シンプルでいいなんて口では言っていても、やっぱりごちそうが並べば喜ぶのがお客なのだから。。
ご飯を食べて社交をする社会もそれはそれでなかなか大変です。。

それにしたって、私はイタリア方式のお客招待なんて慣れていないのでなんだか緊張すること。
フォークを並べたりするのはいまだに順番がわからない、、。
約束の8時半になって現れたルカ、ルイーザとその友人のピーノと、
3人が石造りの階段を昇ってきた時にはああついにやってきた、と思いました。

いつもやっているようにやればいいんだよ、とは仕事でワインを売っているピーノの言葉ですが
そういえば日本で友達をもてなすときはどうやっていたんだっけ?たしかに場所は違っても
日本でやるのとイタリアでやることがそう違うわけではない、と少しほっとして、
後はまぐろのづけと錦糸卵とさやいんげんののったちらしずしを5人でわしわし食べて
わいわいとしゃべりました。切るのに時間がかかるんだろう、とか、どうやってこんなに細く切るんだとか、はしをみんなで操りながら、ルカもルイーザも、そしてお魚好きのピーノも、
ブオニッシモー、とてもおいしい、と
どんどん食べてくれて、ああこれで良かったんだなあ、と思ったのでした。

ちらしずし、じゃなくて「にぎり」を作ったほうがいい、と言われることもあるのですが、
私にとっては「ちらし」は家族のもので「にぎり」は外のもの、
外のカフェで頼まれてごはんを作るときでも自分で何かを催して
ごはんを作る時も「ちらし」で通すんだ、と心に決めているのです。
まあどっちにせよ「にぎり」はつくれないんですけどね。

すでにいい年であるルカもピーノもまだひとりもので、ピーノは時々さびしさをまぎらわせるために「ナイトクラブ」ーーいわゆる日本で言うところのクラブーーに行っているそうです。そのことが話題になり、まったくそんなところにいってお金を払っておしゃべりして、何をやっているのよ、
というルイーザの攻撃を受けて
話はまったくピーノには不利な向きとなりました。

チネマ・コルト・インブラ映画祭は4月21日に始まるため、ルカもルイーザもノミネート作品選考のラストスパートに入っています。階下に住むステファノ・サルドは自宅のテレビ画面で400本以上の作品を見ていたそうで、階上(私)では作品の編集、階下(ステファノ)では選考、というおかしな状況だったようです。

デザートタイムが終わって、さあ見よう、ルカ、ルイーザ、ピーノ、がソファにすわり、かぼちゃタイムが始まりました。何度も見たはずの同居人パオラも、「見れば見るほど ”ますさん” の柔らかさ(テネレッツァ)が伝わってくる」とのことで、飽きずに画面に見入っています。
日本に限らず、イタリアであっても、映画館は若者向けのものが多く、少数派や老人が見られる映画は少ない。
そんな状況の中、たとえ大多数の人に「つまらない」と言われようとも、ひとり、たったひとりパオラ・グリッジョが楽しんでくれればそれでいいような気さえしていた今日この頃でした。

それでも、ルカやルイーザが「うんヨロシイ」と言わないことには映画祭に招いてもらえないわけで・・。

15分が終わった後のルカのひとことは「ベッロ」、いいね、ルイーザは「カリーナ」かわいい、
(愛すべき、といったかんじ)、ピーノも笑っていました。
ベリッシモが最上級の美しさであるならば、ベッロは2段階目なのだけれども、ルカがベッロと言う時は本気でほめてくれている時なので、私には照れくさくうれしかったものです。
ステファノ・サルドとヴァレが見にきたときは、「カリーナ」、だいたいにおいて
「ますさんのかぼちゃ」は、「なかなかいい」小品にしあがったようです。

台所のワインに戻って、5人でまたぐびぐびと飲みながら、ルイーザはこういいました。
「生きてるってかんじかしら」
それに対してルカは「出会い方の問題だ」
84歳のおばあさんのうちに行って午後のひとときをかぼちゃの煮物ですごす、
「しゃべることもできるけれども、しゃべらないでいることもできる」
「しゃべる」ことが第一義とされるイタリアにおいて、
そういうコミュニケーションの仕方は新鮮なようでした。

ブラにしばらくいて気が付いたのは、みんなわいわいとよくしゃべるけれども、しゃべる量が多いわりに奥深い話が出てくることは少なく、腹で考えていることはなかなか表面に出てこないことです。

「私たちの方法は変わらなきゃいけないわよね」とルイーザが言い、
「でもそんなに簡単に変えられるものじゃないわ」とパオラ。

「出会い方」の問題におちがついたのは、
さびしさをまぎらわすためにナイトクラブに行くピーノが
「そんなこといったって、夜中の3時に84歳のおばあさんに電話して会いにいくことができるかヨ」
とのことでした。
それもまた一理あり。。

「出会い」が難しいのは日本であってもイタリアであっても(ブラであっても)同じであって
どこにいっても “さびしさ” はあるのだと思います。

それにしても、「かぼちゃ」の映画を「出会い方」の問題としてまとめてくれたルカには
なんとなく感謝で、やっぱりルカにも好いてもらえてよかった、とほっとしたのでした。

ワインをまたもう1本開けながら「字幕のリストと写真を提出してね」と言うルイーザに、
「でもまだノミネートされてない・・」と言うと、「今された」とのこと。
今回も2年前にひきつづき、参加させてもらうこととなりました。
こんなにすばやく決めていいのか、と言う私に「イタリア方式」と彼らは笑いました。

スシと映画をありがとう、と12時過ぎにようやく帰っていった彼等はこの後、
またおしゃべりをするためにどこかへくり出すに違いありません。

というわけで4月21日から始まる映画祭、あとは英語版の翻訳を作って、テープを新たに作って
提出するばかりです。
松戸市平賀の「ますさん」と、「かぼちゃ」に流れる包丁の音や、水の音、近所の犬や遠くの鳥の声、
全部が4月のブラの映画館に流れます。
私にとっては「ますさん」の映画である以上に、私の育った「平賀」の映画です。

3月29日、30日、一度帰国して港区愛宕山のチーズショップ「フェルミエ」さんで
「羊飼い」の上映会をします。
日本にはじめてチーズを輸入した本間るみ子さんのお店です。
少人数制なのですぐうまってしまうかもしれませんが、来たい人は申し込んでみてください。
もしあふれてしまうようだったら4月にこちらに帰る前にもういちどどこかで企画したいと思っています。
「羊飼い」の映像は今年9月に山に登って撮ったもので、山羊や羊のお乳が、水と火と土と手によってチーズになっていく過程がよくわかります。羊飼いの家族がとても美しく、見るたびに私も、彼らと出会ったことが不思議な気持ちになります。(http://info.fermier.fm 見てみてください。)

映画祭に来たい人は言って下さい。
ショートフェイルムフェスティバルらしく、開催中は「髪をショートにしよう」企画もあるとか、、
なんだか不思議なフェスティバルです。

髪の毛は既に短い、
脇山美伸より

フェルミエさん ーーーーーーーーーーーーーーー
3月29日(月)14時〜15時半
3月30日(火)19時〜20時半
定員:各14名
会費:3000円(チーズ、ワイン付き)
お申し込み:web@fermier.fm(ブラの羊飼い上映会係)
住所:東京都港区愛宕山1ー5ー3 愛宕ASビル
電話:03ー5776ー7772

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://hako-house.com/cgi/mt/mt-tb.cgi/8

コメント

ノミネート、おめでとう。よかったねー。
長い間おつかれさまでした。
(て、まだまだ大変そうだけど)


〆切前の仕事場からどさくさに紛れて返信
詰めの甘さが目の前であらわになる日々です。
取り急ぎ.

kauchi

ハローみのぶちゃん。おめでとうございます。

わたしがひなまつりに作った五目ちらしは、上に散らしたイクラが賞味期限切れでちょっとどきどきでした。
でもみんな無事だった。おいしかったよ。

かぼちゃは今は時季はずれだから、輸入物ばかりです。国産のが食べたい。
食べ物の話ばかりでしたが、またね。

Ciao!美伸さん!
取りあえずは、お疲れ様!私も一応、風邪ひこうが、身内が死のうが休めない業務は終わって、今は順調(?)に飲んでます!
この間はバローロとフレンチを合わせた変な会に行ったよ。合わなくは無いけど、気分的にやっぱり、イタリアワインにはイタリア料理だね~。

なんだかんだ細々忙しかったので、過去分も一気に見ました。
Kauchiさん、そうですあのSATOKOです。この間、美伸さんに教わった吉祥寺の「BABY GROUND」に行きました。ダーツで大盛り上がりして、クセになりそうです。
菜生さんて、あの時居た若手No1のお肌プリプリのナオちゃんですか?(違ったらマジごめんなさい!)
ひな祭りなんて、すっかり忘れて過ぎちゃいました・・・ちらし寿司美味しそう・・・

では、美伸さん!「ますさんのかぼちゃ」の健闘を祈ってます!でも、体調には気を付けてね!!

かうちさん、なおちゃん、さとこさん、コメントありがとう。
なおちゃん、いくらの賞味期限はこわいよね。私はカビの生えたオリーブをおととい食べましたが、大丈夫でした。
びんの中のオリーブをつまんでぽいって口に入れたら、その後残りのオリーブがかびっぽいのを発見した。
ショックでした。
さとこさん、3月に帰ったら「Baby Ground」に一緒に行きましょう。私は行ったことないので。
みなさん、「Baby Ground」は吉祥寺線路際にあるブラジル系のお店です。最近またサンバやボサノバを聞き始めて、仕事につまったときはひとりで踊っています。
かうちさん、矢野顕子が“くうねる”で「ウエルカム・バック」のつめの甘さも今となってはかわいい、って言ってたよ。
(なおちゃん“くうねる”わざわざイタリアまで送ってくれてありがとう。昨日の晩、高村光太郎の記事を読みました。
久しぶりに日本語読んだ。)
この3人は吉祥寺の不思議な「6畳一間上映会」で出会っているんだよね。
また4月に会えるといいですなあ。

コメントを投稿

(いままで、ここでコメントしたことがないときは、コメントを表示する前にこのブログのオーナーの承認が必要になることがあります。承認されるまではコメントは表示されません。そのときはしばらく待ってください。)